Think in their shoes

翻訳のお仕事2019/05/24Think in their shoes

まだ5月だというのに暑い日が続きますね。
気温と共に学習熱も上がればなぁ、と思うこの頃です。
さて今回のコラムは、オペレーターさんが執筆しました。オペレーターさんは「訳文を原稿と同じような見映えにレイアウトする」お仕事です。
学習している段階では見え辛い、翻訳案件の裏側とも言えます。どうぞご一読ください!

「翻訳サービスの提供」というと、形のないものを取り扱っているイメージを持たれるかもしれません。
しかし実際には、翻訳された文章をお客様のご要望に沿った「文書データ」という形にしてご提供しています。
私が従事しているオペレーター職は、この翻訳成果物である文書データを制作する仕事を担っています。

私たちが制作する文書データは実に様々です。
オフィスの書類、マニュアルやパンフレットなどの印刷物だけでなく、データベースとしてのエクセルファイル、パワーポイントの提案書、画像からの文書作成、そして特殊な医薬ドキュメント、エトセトラ…。

翻訳された文章を、お客様から頂いた原稿データと同じように体裁を整え、同じように使用できる文書データを制作する。
文字にすれば簡単ですが、この「同じような体裁に、同じように使用できる」というところには大きな苦労があります。

これは実務翻訳だからとも言えるのですが、私たちが納品した文書データは、その先にお客様が明確な目的をもって使用します。
絵画のように鑑賞するのではなく、印刷し、社内で文書を共有し、時には内容を編集することを前提としたものなのです。
複製が容易で何度も編集ができるという点で、データはとても使い勝手がよいものです。
それだけに納品した文書データは、お客様の元に届いたその先にどのようなことが待ち受けているかわからないとも言えます。

それゆえ、私が制作作業のときに一番大切にしていることは、「相手の立場になって考える」ことです。
この場合の「相手」というのは、原稿の作成者・お客様・翻訳者・校閲者・作業者・文書の読み手など、制作した文書に関わるあらゆる人を対象とします。
作業の工程で、納品後にお客様の元で、またその文書データを使用することになった方が、文書を編集するときに困ることのないように、考えに考えて、作り上げます。

「この文書を使用する人のことを考えて、操作に熟知していない人にも分かりやすく、そして編集しても同じような見映えを保てるように」
仕事を教えてくれた大先輩の大切な言葉です。

私たちが取り扱う文書データは、お客様の大事な情報資産です。だからこそ自分の手元を離れた後、あらゆる人の立場を想像しながら、「ああでもないこうでもない」と日々仕事をしています。

これから翻訳者を目指す皆さんも「自分の生み出した訳文はずっと使用されるかもしれない」という視点を持って、翻訳に臨んでいただければ嬉しいです。

「未来の誰かが、私たちが制作したドキュメント(文書データ)を見て、よかったと思えるように」
今日も気を引きしめて、お仕事を頑張っていきたいと思います。

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